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患者がAIで武装する時代、病院選びはAIが決める

Top Companies AI — Japan (2/2)3h ago
患者がAIで武装する時代、病院選びはAIが決める

Key takeaway

患者がAIに病院選びを相談する時代が到来し、医療機関の選別がAIの推薦に大きく左右されるようになります。医療情報は従来の論理的で正確な発信だけでなく、AIが読みやすいよう構造化することが必須となり、同時にAIに選ばれない施設はファンとしての患者の共感と愛を育てることで生き残る戦略が必要になるという指摘です。

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3 Key Points

  • 何が起きたか

    医療情報発信の専門家・佐藤尚之氏と病理医・市原真氏が対談し、AIが医療情報を集約・推薦する時代における医療界の転換点を語り合いました。患者がAIに病院選びを相談するようになり、AIのおすすめ候補は3~5施設に絞られるため、AIに選ばれない医療機関は患者を失う可能性があると指摘しています。

  • なぜ重要か

    これまで医療者は論理的で正確な情報発信を重視してきましたが、病気になった患者は感情が大きく揺れ動いており、ロジックだけでは患者心理に届かないことが多くあります。同時にAIが情報を読み違える場合があるため、医療機関は情報をAIが読みやすいよう構造化する必要が生じ、医療情報提供のあり方そのものが問い直されています。

  • 注目点

    AIに選ばれない病院の生き残り戦略として、「ファンベース」(ブランドや価値観の支持者を基盤とする考え方)が重要になります。佐藤氏らは学会や公的機関のWebサイトをAI最適化する支援をプロボノで始めており、これにより偽の医療情報やエセ医学がAIに取り上げられなくなる可能性があるとしています。

In Depth

医学書院から『がんユニバーシティ』を上梓した旭川医科大学病院病理部・病理診断科准教授の市原真氏と、コミュニケーション・ディレクターで株式会社ファンベースカンパニー創業者の佐藤尚之氏による対談が実現しました。二人の出会いは2021年のメディカルジャーナリズム勉強会で、その後、国立がん研究センターのがん情報サービス構築で助言を受けるなど、医療情報の社会発信に関する問題意識を共有してきました。

佐藤氏の基本的な主張は、医療従事者の思考様式と一般生活者の思考様式の大きな乖離にあります。医師たちは学校教育から医学教育まで、論理的思考を徹底的に訓練されてきた社会的上位層です。その結果、医療者同士で相互作用が多いため、ロジカルではない思考をする人々の気持ちが理解しにくくなっているといいます。医療情報を発信する際、この論理中心の思考は「わかりやすさ=誰でもわかる論理」という等式に陥りやすく、患者の感情的不安には対応できません。実際に病気になった患者は感情が大きく揺れ動いており、ロジックだけでは「ニンジンジュースが病気に効く」といった根拠のない情報さえ信じてしまう可能性があります。

こうした問題意識から、佐藤氏は2018年にアニサキスアレルギーを発症した経験をきっかけに、2021年にアニサキスアレルギー協会を設立しました。当時、この病気に関する情報はネット上にほとんど存在せず、専門医の間でも認知が低かったため、患者と医師、患者と研究者、患者同士の対談など「共感」を軸とした情報発信を開始したのです。

しかし今、新たな転換点が訪れています。佐藤氏は「これからは病気になったら誰もがまずはAIに尋ねるようになる」と指摘し、患者はAIで「理論武装」して医師の診察に臨むようになると述べています。既に「先生はそう言いますが、うちのAIはこう言っていますよ」と患者に言われる状況が現実のものとなりつつあります。さらに重要なのは、医師の選択だけでなく病院選びもAIに相談するようになることです。例えば「膵臓がんと診断されました。セカンドオピニオンも含めてどの病院で治療を受けるのがベストですか? 住まいは旭川で、札幌くらいまでは候補に含めて構わないです」とAIに聞けば、詳細で親身な情報が得られ、最終的には3~5施設がAIのおすすめ候補として残ります。

このAIによる選別効果は既に消費行動で現出しています。佐藤氏自身、膝のランニングシューズをAIに相談すると、ホカ、ニューバランス、アシックスの3つが勧められ、その3つのいずれかを選ぼうと考える。つまり、AIに選ばれていないメーカーの製品は、最初から候補から消えるということです。今後、医療でも全く同じことが起こり、適切な医療を実践していても、AIに選ばれない病院には患者が来なくなります。

では、AIに選ばれるには何が必要か。佐藤氏によると、AIは学会や公的機関の情報を信頼する傾向がありますが、最も重要なのは「その情報がAIにとって読みやすいよう構造化されているか」ということです。マークダウン方式などで、どんな情報が載っているのか、その意味や役割、ソースやエビデンスが構造的にまとめられていることが大切です。PDFや動画だけではAIに読まれない可能性が高いのに対し、テキストベースで論理的に構造化されたサイトはAIが読み込みやすくなります。正しい情報を届けるには、Webサイトの人間向けの優しさよりも、AIが読みやすい構造を優先させる必要さえ出てくるということです。

しかし、すべての医療機関がAI最適化に成功できるわけではありません。その場合、「ファンベース」という別の戦略が重要になります。ナイキのファンがAIの勧めをいくら受けても「自分はナイキを買いたい」と考えるように、医療でも「あの病院が好きだ」「どうせ死ぬならあそこで看取られたい」「できればあの先生に診てほしい」という患者の強い思いを喚起することが生き残りの鍵になります。これはロジカルなアプローチではなく、共感や寄り添いに近い感情的なアプローチです。既存患者をより大切にしてファンにしていき、彼らの満足度と愛を育てることがキーポイントになるでしょう。

さらに重要な試みが、学会や公的機関のWebサイトをAI最適化する支援です。佐藤氏と仲間はプロボノ(職業スキルを活かした無償活動)も含めてこの取り組みを始めています。医療情報の発信内容そのものには手を入れず、既存の情報をAIが読みやすいよう再構造化することで、学会や公的機関のサイトをAI最適化する狙いです。市原氏も学会の情報整備委員として複数の学会に対し、佐藤氏らへの支援を提案しているところです。このプロジェクトの最大の意義は、エセ医療情報や偽医学を駆逐できる可能性にあります。正しい医療情報を構造化してAIに読ませ、同時に「ニンジンジュースが病気に効くと唱える医師もいるが、それを証明するエビデンスは1つもありません」といった否定情報も網羅的に載せておくことで、AIがエセ情報を「エビデンスがない情報」として拾わなくなるという仮説です。誰もがAIに相談するのであれば、AIが正しい情報を常に引っ張ってくるよう工夫することで、ユーザーに不正確な情報が伝わらないようにできるというわけです。

Context & Analysis

医療情報のデジタル化とAI時代の到来は、医療界の情報発信戦略を根本から変えつつあります。従来、医療者は科学的根拠とロジックに基づいた正確な情報発信を最優先としてきました。しかし対談では、患者が病気によって感情的な不安定性を経験するため、論理だけでは患者心理に届きにくいという構造的課題が指摘されています。この問題は、AI時代にさらに複雑化します。患者がAIに相談するようになると、医療機関はロジック(AI読み込み向け)と感情(患者向け)の両方を同時に満たすWebサイト設計を迫られるからです。

佐藤氏の指摘する「AIに選ばれる3~5施設」という現象は、単なる技術的な変化ではなく、患者の受療行動そのものを劇的に狭める経済的影響を持ちます。AIが医療機関を評価・推薦する基準が明確でない一方で、その影響力は絶対的であるため、医療機関はAI評価に対する対応を無視できなくなります。同時に、AIの推薦ロジックが公開されていないため、医療機関側は試行錯誤しながら最適化を進めるしかないという非対称性も問題です。

こうした状況下で、佐藤氏らが進めるAI最適化の支援は、単に医療機関の選別を加速させるのではなく、エセ医療情報の排除というより大きな公益目的を掲げています。正しい医療情報を構造化してAIに読ませることで、患者がAIに相談するたびに正確な情報に到達しやすくなるという仮説です。この取り組みが成功すれば、医療界全体が共有するノウハウになりうる可能性があると市原氏も期待を述べています。

FAQ

AIに選ばれない病院はどうなるのか?
患者がAIのおすすめ候補3~5施設のみから病院を選ぶようになるため、AIに選ばれていない医療機関はどんな広告をしても患者が来なくなります。ただし、既存患者をファンに育てて強い思いを喚起することで、AIのおすすめとは別軸での生き残りが可能です。
医療情報がAIに読まれやすくするには何が必要か?
マークダウン方式などで情報の意味や役割、ソース、エビデンスを構造的にまとめることが大切です。PDFや動画だけではAIに読まれない可能性が高いため、テキストベースで論理的に構造化されたWebサイト設計が必須条件となります。
エセ医療情報を駆逐する方法は?
正しい情報だけでなく、「ニンジンジュースが病気に効くと唱える医師もいるが、証拠はない」といった否定情報も含めて網羅的にサイトに載せることで、AIがそれらを「エビデンスがない情報」として拾わなくなり、偽情報の影響を減らせます。

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