
フィリピンのコールセンター雇用は10年でほぼ倍増し200万人に。
フィリピンとインドで失業率が低下し、AIが海外労働者を奪っていないとの見方も。
経済学者はジェボンズのパラドックスと説明する。
何が起きたか
アポロのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏によると、フィリピンのコールセンター雇用は2016年から2025年にかけて毎年増加し、ほぼ倍の200万人に達した。一方、フィリピンの失業率は2021年から2026年7月までの間に9%から約5%へ、インドでは約7%から6%へ低下した。
なぜ重要か
スロック氏は、これはAIがホワイトカラー労働者を追いやるという見方に反すると主張。ジェボンズのパラドックスを挙げ、AIがコールセンター業務を安く速くするほど、企業はそのサービスをより多く購入するようになると述べた。ブルッキングス研究所は、カスタマーサービスのタスクの86%が自動化の可能性が高いと推計するが、雇用は伸び続けている。日本のコールセンター業界でも、AI導入が雇用減少ではなく業務拡大につながる可能性がある。
注目点
2023年の研究では、AIアシスタントがコールセンターエージェントの時間当たり生産性を14%向上させたとされ、AIがこうした職種の需要を高める可能性が示唆される。ただ、専門家の中には、AIは複雑な問題には依然として弱く、ブランド上の理由から人的対応を重視する企業もあると指摘する声もある。
アポロのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏のデータは、AIと労働をめぐる議論におけるパラドックスを浮き彫りにしている。AIがホワイトカラーの仕事を奪うとの見方が広がる一方、フィリピンのコールセンター業界は2016年から2025年にかけて着実に成長し、雇用はほぼ倍の200万人に達した。フィリピンとインドの失業率はともに低下しており、AIが海外労働者を大規模に追いやったとは言えない状況だ。これは、効率向上が消費減少ではなく需要増加につながるというジェボンズのパラドックスの歴史上のパターンと一致する。
一部の経済学者は、AIが今後も生産性と雇用を押し上げるとみている。2023年の研究では、AIツールがコールセンターエージェントの時間当たり生産性を14%向上させた。また、初期の研究ではAI翻訳がeBayの輸出を拡大したことも示されている。一方で、専門家は限界も指摘する。AIは複雑な問題にうまく対応できない可能性があり、人間には認知的過負荷が生じることもある。差別化のため、あえて人間のエージェントを活用し、よりパーソナルな対応を提供しようとする企業もある。
この議論はコールセンターにとどまらない。10年前、AIの先駆者ジェフリー・ヒントンは放射線科医が置き換えられると予測したが、米国の放射線科医の数は実際には10%増加している。これは、多くの分野でAIが人間の労働を奪うのではなく補完する可能性を示唆するが、長期的な行方はなお不透明だ。
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